ポジティブ心理学とAI

 今回は、「ポジティブ心理学とAI」というテーマです。
 この、ポジティブ心理学は何となくわかる方も多いと思いますが、AIは人工知能のことではありません。ODでは基本的な技法と言われているワークショップの技法の中のAI、Appreciative Inquiryの略です。ポジティブ心理学やポジティブ・アプローチをベースにしてこのAIというやり方ができていると言えます。

 まず、ポジティブ・アプローチについてですが、ポジティブ心理学はセリグマンが1998年にアメリカ心理学会の会長に就任した時に提唱したものです。世の中には、〇〇心理学というものがたくさんありますが、ある領域を言っているわけではなく、生き方とか物事の捉え方とかをポジティブにしましょうという心理学だと考えてください。この本の帯には「楽観的で前向きな人は、幸せで、長生きで、成功する!!」と書かれています。こちらのセリグマンが書いた本でも「オプティミストはなぜ成功するか」という表題になっています。オプティミスティック=楽観的に物事を捉えていけば成功しますよと言うことが書いてある本です。楽観的に物事を捉えると物事はうまくいく、これが、ポジティブ心理学のベースになる考え方です。

 このポジティブ心理学をベースにした考え方であるポジティブ・アプローチを説明します。「問題解決型アプローチ」と「ポジティブ・アプローチ」を対比して説明します。「。問題解決型アプローチ」というのは、よく私たちが発想するやり方だと言われています。今どこに問題があるか、その問題の原因を探ってそれを何とか解決しようというアプローチが「問題解決型アプローチ」です。つまり、悪いところはどこかというふうに見ていくということです。それに対して、「ポジティブ・アプローチ」は、自分の本来持っているいいところ(図では「最高の価値」)を見つけて、そこから生じる未来はどうなるか、それをみんなで話し合う、そうすれば、それが「革新」「変えていく力」になるという考え方です。そのような考え方をベースに手法化されたのがAI(Appreciative Inquiry)です。

 組織に対して働きかけをして組織を良くしていくという、組織開発(OD)の分野にいた人たちは、それを「4Dサイクル」といわれるプロセスにしました。具体的には、デビッド・クーパーライダーやダイアナ・ホイットニーが提唱したものです。これは4つのDで構成されているサイクルで、ぐるぐる回るわけです。

 最初のDは、Discovery=発見です。個人個人やグループ(部署、企業全体など)としての、いいところ(最高の価値)、ポジティブコアを見つけていくわけです。次のDは、Dream=夢です。Discoveryで見つけたいいところから自分たちの可能性をDreamしましょうということです。3つ目のDは、Design=デザインです。Dreamした可能性を具体化するためにデザインしましょうということです。最後のDはDestiny=運命です。当初はDeliveryと言われていましたが、具体化、具現化する意味として考えてください。Dream、Designで出てきた素晴らしい未来の姿は、あたかも決められた運命(Destiny)であるかのように行われていくということです。これはサイクルですから、実際にやってみて新たに何かいいところが発見され、もっと素晴らしいDream、Designを行って、またDestinyになります。このようなことを企業の中でやることが、企業を凄く力強くする、大きな成果を上げられるということが、AI(Appreciative Inquiry)の手法です。

 このAIについては、キャリアコンサルタント更新講習でも説明していますし、アドバンストコースの「組織キャリア開発士養成講習」でも、より深い体験ができるようになっています。さらに、それを修了した方々が「組織キャリア開発フォーラム」という任意団体を作っており、企業に対してAIプロジェクトとしてセミナーを行ったりしています。そのような、我々の活動にも関心をもっていただければ幸いです。

上記コラムの説明動画です。

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(柴田郁夫)