「組織キャリア開発フォーラム」について
「組織キャリア開発フォーラム」は、一般社団法人地域連携プラットフォームが提供している「組織キャリア開発士」の全研修課程を修了し、その資格を取得された方々が集まって出来た組織です。
「組織キャリア開発」とは、聞き慣れない言葉でしょうが、「組織開発」と「キャリア開発」が含み込まれた用語です。 組織開発(OD/Organization Development)は、企業やグループなどに働きかけて組織が元気になること。一方、キャリア開発(Career Development)とは個人に働きかけて個人が元気になること。そう考えれば、「組織キャリア開発」は、組織と個人の両方を元気になること、となります。それを担える技量を有した人材を「組織キャリア開発士」と呼称しているわけです。
組織キャリア開発フォーラム代表 柴田郁夫
もともと「組織キャリア開発士」の研修課程は、「キャリアコンサルタント」という国家資格をお持ちの方向けにアドバンス資格として企画しました。その後その対象は、組織開発(OD)に関心を持ってこの資格を取得したいという方々にまで広がりましたが、研修を立ち上げた際の問題意識は、以下のようなものでした。
クライエント(相談者)個人の問題は、
組織の問題にまで広げなければ、解決されないことがある。
キャリアコンサルタントは、1対1での面談を通じて、相談に来られた方(クライエント)の問題解決をサポートしますが、その問題は、個人だけではどうしても解決できない場合があります。その方が属している組織に問題がある、ということです。
キャリアコンサルタントは、組織の問題にまで踏み込まなければいけない、と言われているのですが、残念ながら組織を元気にしていくための実践的な知や具体的なスキルについては、十分に学べる場が少ない、という現状があり「組織キャリア開発士」という資格を立ち上げた、という経緯があったのです。
前述したように、今では「組織キャリア開発士」の資格を取得される方は、キャリアコンサルタントに限りません。企業の中の一員として、自社を良くしていこう、と思われているスタッフの方や、またODコンサルタントといった仕事をしておられる方が取得もされています。 現在、組織キャリア開発フォーラムでは、株式会社・合同会社・NPO・自治体・社団法人・組合など種々の組織からの依頼を受け、組織とそこで働く個人の双方が元気になる「伴走型」の支援を行っています。
「伴走型支援」と「組織と個人の活性化」
「伴走型支援」とは、助言や指示を極力しない、ということです。例えば組織や個人に対して「こうした方がいいですよ」といったアドバイスや、ましてや「こうすべきです」「こうしなさい」といった指示はしません。では何をするかと言えば、それは個人や組織が自ら良くなっていくための変化を、自らの内発的な力によって、できるようになるように支援することです。
キャリアコンサルティングでも同様なのですが、クライエントの方の話をよくお聞きしたうえで、その方に何なりかの「気づき」を得ていただき、その方がどうしていくのかを自ら意思決定していただく、ということが私たちが培ってきたスキルです。
それと同様のことを組織に対しても行います。私たちは組織で何が起きているのか、どのような組織なのか、といったことを、組織を構成している方々に「気づいて」いただき、そこから組織自らがどうしていくか、を決定するという、その過程(流れ)を生み出すことに私たちはコミットしています。
その流れは、私たちが強制的に生み出すものではありません。あくまでも組織の成員の方がそれを作り出していくものであるので、私たちが行うことは、その変化への過程を、一緒に悩み、考え、一緒に歩く(走る)ということになります。それゆえ「伴走型支援」と言っています。 組織が、自ら気づき(※)、そして自らが本来もっている本来の力(「グループ・ダイナミクスの力」とも呼んでいます)によって、自分自身で変革していく、そのような動きが起きるように、介入(インターベンション)するのが私たちの役割です。
※組織を構成する個人一人一人が気づく、ということを超えて“組織が”気づく、ということが実際あるのです!
そこでは、今までに組織心理学という学問分野や、OD(組織開発)という領域で蓄積されてきた幾つかの手法やスキルを用います。また私たち(組織キャリア開発士)はキャリアコンサルティングという背景を持っている者が多いために「セルフ・キャリアドック」(※)と国が命名している手法を用いることも多くあります。
※「セルフ・キャリアドック」とは、定期的なキャリア診断を従業員が受ける、という意味で「人間ドック」から派生して作られた言葉です。組織を構成する一人一人と面談(キャリアコンサルティング、あるいはコーチング)をし、その前後に、複数のスタッフや全スタッフが集まってのワークショップを適宜行うなどして、組織と個人の気づきを促し、それを組織変革につなげていく方法です。
その組織に合わせて、どのような手法を用いたとしても、事前に経営層(中小企業であれば経営者の方)とコミュニケーションを行い、その組織の理念や進みたい方向などについて、じっくりと対話を重ねます。そのうえで、各組織にあった研修ワークショップのやり方や、個別のキャリアコンサルティングへの道筋を詳細にデザインします。
大事なことは、いかに従業員の方々が変革に向けての動きを始めてくれるようになるかです。私たちは変革へ向けた流れが生まれるように、効果的な介入をするのですが、あくまでも主役はその組織及びその構成員一人一人です。
介入は、意図をもってデザインされたものではありますが、あくまでも組織自身が変わっていくためのきっかけ(契機)となるものにしかすぎません。その変化の方向や具体的な内容がどのようなものになるのかは、組織自身が生み出すものとなります。
私たちのような伴走型支援をうたっているコンサルファームではなく、組織を分析して、最適と思われる変革への方向性や組織としての戦略などを明確に示そうとする(旧来的な)コンサルファームもあります。
そこで提示される助言や指示が、いかにすばらしいものであったとしても、それを実際に実施するのは誰なのか、と考えたときに、上から降ってきたような変革へのシナリオが本当に実践されるでしょうか?
自らが属する組織への理解を深めたうえで、自らが作り出した変革へのシナリオこそが、実際に試してみる価値がある、と思われることが多いのではないでしょうか。 その意味においても、私たち組織キャリア開発士が行うことは、組織と一緒に走ること(伴走すること)であり、それが組織と個人の変化を生み、活性化(組織と個人が元気になっていくこと)へとつながっていく道筋であると考えているのです。
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