キャリ飯~キャリコンとして如何に飯を食っていくか(前編)
「キャリ飯」=「キャリアコンサルタントが国家資格を取得後、キャリアコンサルタントとして如何に生きていくか、如何に収入を得て食べていくか」についての現状と問題点や感じていることに対して、先日、アンケートを実施しました。85名もの多くキャリアコンサルタントの方から回答をいただきました。
アンケート結果より「資格取得後の職業の変化」
国家資格キャリアコンサルタント取得後の職業の変化についてのアンケート結果は、以下のようになりました。

資格取得後であっても、キャリコンに関連のない職業の方が47人(55%)もいることに注目できます。

その理由については、「職が見つからない」(41%)、「副業禁止」(9%)(左記の両方 5%)が上位となっています。
さらに自由回答では、
「食べていけない」についての意見数は「115/225意見」と過半数、「キャリコンの知名度、ニーズ(必要性)」については「企業内のニーズ・必要性がない」24/30意見、「(企業外の)社会一般」64/225意見、と多数の意見が出ています。
この「キャリコンの知名度、ニーズ(必要性)」については、まとめると以下のような意見になりました。
- 欧米とは異なり、日本では「キャリア」「キャリアコンサルティング(キャリコン)」という言葉は認知・認識されていない
- 「仕事や会社の経歴」については、他人に相談するものではないという意識が強いのではないか
- 「お金を払ってまで相談する」ということに対する抵抗感がある
キャリアコンサルティングのニーズ・認知度向上のために
このような日本の環境下で、「何をすべきなのか」「何ができるのか」について下記のような意見がありました。
- 政府への要請、JCDA・キャリ協が対策を講じるべき
- 大企業・中小企業・個人向け
- パラレルキャリア制度のPR・促進
- BtoBモデルの定着
- テレワークによる「人事評価」方法の変革
- (中小企業向け)「求人・定着」をフロントとするアプローチ
- (個人向け)書籍「キャリコンさん、いらっしゃ~い」
- 信頼できるプラットフォームの設立
この中で1. 政府への要請、JCDA・キャリ協が対策を講じるべきに関しては、我々キャリアコンサルタントが、政府に辛抱強く働きかけていくことが必要であると思いますが、まずはJCDA(日本キャリア開発協会)やキャリ協(キャリアコンサルティング協議会)に対しても、声を上げていくことから始まるのではないでしょうか。
ここからは、2.以下について紹介していきます。
大企業・中小企業・個人への「ニーズ・認知度」喚起
1. パラレルキャリア制度のPR・促進
(時代の流れで今後重要になるかもしれません・・・)
パラレルキャリアとは、働き方形態の多様化に伴い、ひとつのキャリアにこだわらないキャリア形成のことです。ピーター・ドラッカーが提唱したこれからの社会での生き方のひとつであり、「本業とは別の第二のキャリアを歩むこと」「本業以外に他の仕事を持つこと(複業)や、NPOや社会人学校などに参加すること」としています。一方で、「副業」は金銭的な報酬を得ることを目的にしていますが、「パラレルキャリア」は自分の夢の実現やスキルアップ、社会貢献活動など収入を得るためではない活動をすることを意味します。趣味から活動の幅を広げて、起業の準備として始めたり、またNPOやボランティアサイトを通じて活動をおこなったりと、多様な始め方が考えられます。当初は無報酬でおこなっていた活動が、徐々に報酬を得ることができるようになったという例もあります。「パラレルキャリア」では、1つのキャリアだけでは得ることのできない経験を手にすることができ、個人の人生がより豊かになることが期待できます。
2. BtoBモデルの定着
B to Bモデルとは、法人、団体、学校法人が、その従業員のために、キャリアコンサルティングを業とする事業会社に年間費用を払って契約するものとします。
私は、一般の労働者個人がキャリアについて「お金を出してまで、相談しよう」という考え方が少なく(特に日本人)、キャリコンに対する知名度、ニーズ、必要性が定着していない現状では、「企業が従業員のために費用を支払い、従業員は無料で受けることができる」というB to Bモデルが一番現実的だと考えています。そのためには、企業が従業員に対してお金を出して、キャリコンを受けてもらうシステムをどのように構築していくかというセルフ・キャリアドックについての取り組みが必要です。(詳細については、機会を改めて述べさせていただきたいと思います。)
3. テレワークによる「人事評価」方法の変革
こちらについては、まさに喫緊の課題ですので、ここでは割愛します。
4. 中小企業向け:「求人・定着」をフロントとするアプローチ
中小企業のほとんどが「売上・利益を上げる」ことを最重要視しており、「従業員のキャリア、キャリコン」に対する認識は極めて薄く、
「キャリコンって何?」
「キャリアって何よ?それをやって何の得があるの?」
と、見向いてもくれない現実があります。
また、
「そんなことをしたら、優秀な社員が辞めていくのでやりたくない」
という、キャリアコンサルティングについて誤った認識を持たれている経営者もおられます。
従って「キャリコンを実施すること」からアプローチするのではなく、「売り上げ・利益」の次に、今重要となっている
「求人できない、良い人材、欲しい人材が来ない、優秀な社員が辞めていく」
という課題を解決する「求人・定着」の対策からアプローチするのがいいと思われます。
「『求人』のお手伝いをしますよ。それも無料で」
というアプローチは、中小企業の経営者からすれば、
「待ってました!」
と向こうから飛びついてくるものです。
そして、その求人ができた段階で「では、求人の後は『定着』の問題がありますが、私はキャリアコンサルタントなので、お手伝いできますよ」というように持っていけば、先方からはこちらは求人をしてくれた「先生」になりますので、人間関係、信頼性、聞く耳は出来上がっているのでキャリコン業務についてもスムーズに繋がると思います。
ではどうすればいいのか? ひとつの提案を後編で触れますね。
(勢口 秀夫)