個人の活力を引き出し、組織の成長へつなげる「セルフ・キャリアドック」(前)

 今回は、従業員の活力を引き出し、組織の成長へつなげる「セルフ・キャリアドック」についてお伝えします。

 さて、2020年春の 新型コロナウィルス対策として各社テレワークが加速し、これまで取り組みを行っていなかった企業でも緊急対応が求められました。その中で遠隔でのオンライン上での上司・部下とのコミュニケーション、オンライン上での研修など、これまでにない職場の人との関わり方、パフォーマンス発揮、マネジメント力が問われています。

 組織の中だけではなく、世の中全体として見ても「アフターコロナ」の世界は、これまでと異なるものになるでしょう。働き方、生き方、生活スタイルなど価値観や行動様式の変化がでるのは必須です。
また社会構造も「VUCA(変動・不確実・複雑・不透明)」の時代となっており、これまで以上に変動が大きく、予測不可能な社会となっていきます。

 不確実性が高まり先を見通せない時代になると、組織主導の「人材開発」は機能しにくくなり、自分のキャリアに自分が責任を持つという意味で、自律的なキャリア開発、すなわち「キャリア自律」が求められます。「自律」とは、自分で舵取りをして、方向を決めて歩んでいくことです。「キャリア自律」とは、組織の視点から育成されてきた仕組みを、個人の視点から再構築することと言えます。

 この社員の「キャリア自律」を促進させるための手法が「セルフ・キャリアドック」です。
「セルフ・キャリアドック」とは、定期的なキャリアコンサルティングとキャリア研修などを組み合わせて行う「従業員のキャリア形成を促進・支援すること」を目的とした総合的な仕組みのことです。
2015年6月30日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」において、雇用制度改革・人材力強化のための施策の一つに、「セルフ・キャリアドック」の導入・促進が盛り込みまれ、大手企業を始め中堅中小企業でも取り入れ始めています。

 こうした制度を実施する企業では、社員の自律が社員の成長につながり、変革の時代の事業展開において社員の自発性や多様な経験をベースに、組織にとっても有効なものであると判断されています。
社員のキャリア自律を促すことは、仕事へのモチベーションを高めることになり、結果として組織への求心力を高めるという側面も重視されています。

 セルフ・キャリアドック実施においては、個人と組織の双方に働きかけをします。
個人にはキャリアコンサルティング面談の実施、集団ではキャリア開発研修などを実施します。
その個人との面談で得られた結果を、守秘義務の範囲内で組織へフィードバックします。
なぜなら、個人が抱える問題は、個人のみで解決できるものではないことが大いにあり
組織への働きかけが必要になってくるからです。
個人の問題は必ずしも特定の個人に起因するものではなく、組織からの何かしらの影響を受けていることが多いです。

セルフ・キャリアドック(グローリンク株式会社)

次回、「個人の活力を引き出し、組織の成長へつなげる「セルフ・キャリアドック」(後)」に続きます。

中藤 美智子

(中藤 美智子)