クルト・レヴィンについて

 今回は、組織キャリア開発フォーラムの方たちと私が一緒に訳した「NTLハンドブック」からご説明します。NTLというのは、National Training Laboratoriesという団体の略で、日本語では「全米トレーニングラボ」「国立トレーニング研究所」と訳されます。NTLは非常に長い歴史がある団体で、設立から70年以上にもなります。その創始者の一人が、実質的な創始者ともいえるクルト・レヴィンです。クルト・レヴィンはあまり知られてはおらず、例えば、Amazonでレヴィンの本を探すと数冊しか出てきません。

 このNTLハンドブックはNTLの創始者の方々が作った本であり、内容は全7部、34章を50人近くの人が執筆しており、それぞれの章を1~2人で書いています。この本の最後の方では、第7部(Part 7)第32章「クルト・レヴィン(Kurt Lewin)再考」、第33章「ODの『創発的現在』へのレヴィンのレンズ」は、レヴィンへのオマージュということで、レヴィンをもう一度評価し、その業績をしっかり書いておきたいという意識で書かれています。

 クルト・レヴィンは「グループ・ダイナミクス」という分野を作り出しました。例えば、「場の理論」というものがあります。それは、人々が作る集まり、グループには、そこに「場(field)」があり、そこにいろいろな力が働いている、そこにはいろいろなことが起きているというものです。例えば何人のグループでもいいのですが、3人や5人の家族の中でもある種の力が働いている。これが会社組織でも10人の部署でも何らかの力が働いている。人々が集まってグループを形成すれば、このような「場」が存在します。これが100人の企業でも、もちろんそこには「場」が存在する。このようなフィールドというものに注目をしたのがクルト・レヴィンです。「場の理論」では、グループ、集団、組織の中で何が起きているか。あるいは、その組織が外に対してどのような働きをしているか。そのようなことを学問として研究し、作り出していきました。日本にもグループ・ダイナミクスに関する学会ができ、組織開発(OD:Organization Development)として広がり見せていますが、その創始者がクルト・レヴィンであると考えます。

 もう一つ、現在よく「アクションラーニング」などと言われますが、元々はクルト・レヴィンが創始者とも言える「アクション・リサーチ(AR)」という言葉で、NTLハンドブックの中にも多数出てきます。クルト・レヴィンは、組織のことをよく理解、把握しようと思ったら、組織に何らかの働きかけをしなければ、本当の意味で組織のことはわからない、外からただ観察するだけではわからないと言っています。例えば、皆さんが自分のいる組織、自分のいる会社を良くしたいと考えたときには、アンケート調査で会社のことを研究してわかりましたというようにしただけでは、十分にわかったことにはならない。アンケート調査の結果を分析するだけではなく、そこからアクションを起こしていく、それで初めて組織を理解できるとレヴィンは言っています。

 今回は、クルト・レヴィンと彼が創設したNTL(National Training Laboratories)を心に留めていただければいただければと思います。

上記コラムの説明動画です。

NTLハンドブック
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組織開発(OD)と変革

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(柴田郁夫)