組織キャリア開発士として目指したいこと

 私が会社に入社したのは1984年、以来2020年9月末に退職するまで長きにわたりサラリーマンとして仕事をしてきました。そしてこの期間はいわゆる「失われた30年」と揶揄される日本の社会、経済が輝きを失いつつある時期とほとんどオーバーラップします。

 企業の時価総額ランキングをみるとバブル時代の1989年(平成元年)にはTOP50社に日本企業は32社、トップ10を見ても7社が日本企業が占めているという状況でした。ところが30年後の2019年には、TOP10はおろかTOP50社の中にトヨタ自動車1社だけがかろうじてランキングされているという状態にあります。もちろん時価総額が企業価値のすべてではないとは思いますが、少なくとも企業の価値創造の量として評価できる指標だと思います。

 ただ、私たちはこの30年間、決して仕事に手を抜いたわけではなくむしろ懸命に働いてきたというのが振り返ってみての印象です。そうしてみると何か一生懸命に力を注ぐ方向性に何か間違いがあったのではないかと思わざるを得ません。

 何が違っていたのかという観点で現在、時価総額上位のGAFAや中国のBAT(百度、アリババ、テンセント)を見てみると、お客様や社会に対する価値提供への拘りという部分に大きな違いがあるのではないかと感じています。いわば売上至上主義販売型ビジネスとお客様・社会至上主義価値提供ビジネスの違いです。このことは私たちも総論では理解していたものの、人口増加とマーケットの拡大を背景にした作れば売れる時代の成功体験から抜け切れず、各論では思い切った転換ができていなかったのではないかと感じています。特に、たくさんの成功体験を持つ経営メンバーと今まで通りやっていてはうまくいかなくなり、葛藤し続ける現場の間のギャップは広がる一方で、これを埋めることができなかったことも大きな要因であるような気がします。日本企業ではトップに忠実なヒエラルキー組織の中で、調整や忖度が価値あるものと考えられ、調整力のある人間が優秀と評価され、自らの信念のもと革新を目指す人間は「出た杭は抜かれる」式で、自然淘汰されていくことが繰り返され、同質性が重視されることで、多様性が失われ、結局新たな価値に対するアンテナが立たなくなってしまったのではないでしょうか。

 これからの日本企業は過去の成功体験を捨てて、改めてお客様と社会に向き合って新しい価値を探求していく必要があると考えます。そのためには新しい価値創造という目的に向かって、メンバー全員が対等な立場で共創していけるような組織づくりが必要と考えます。私は組織開発手法を通じて、このような組織づくりのお手伝いができればと思っています。

部村 啓介