キャリアコンサルティングに必要な法律知識(1)<総合編>
私は、公共機関であるハローワークで訓練前キャリアコンサルタントとして、2年間、のべ400人程度の相談に携わってきました。
名目上は、訓練前キャリアコンサルタントとしての業務ですが、ハローワークには様々な相談者の方がいらっしゃいます。ハローワークの求人窓口では手に負えないか方々が回ってくる時があります。
例えば、以下のようなものです。
- 精神病のリワーク中の方のキャリア相談
- アルコール中毒でリワーク中の方のキャリア相談
- 病弱で休職中の方のキャリア方向性相談
このように、書籍やスクール等で学んだキャリアコンサルタントの知識では到底解決できない相談があります。
キャリアコンサルティングの基本といえば、「傾聴」「受容」「共感」が重要だと言われます。
しかし、これら以外に「生活支援」という要素が必要な相談が多いのが現実です。
ハローワークで色々な相談事例と向き合ってきましたが、心に抱えた悩みを解決するために相談に来るのです。ただ聞いているだけでは、クライエントは悩みを話すことによってスッキリはしますが、悩みの解決には至らないことが多々あります。
相談者は悩みの解決を求めてキャリアコンサルタントと面談に来ているのです。
では、組織内のキャリアコンサルティングはどうでしょうか?
そのような相談者は来ないから「傾聴」「受容」「共感」だけしていれば相談者は満足すると錯覚をしていませんか?
こんなカタチの相談をいかに列挙してみました。これ社内でも結構ありがちです。
回答がおおよそ思い浮かぶでしょうか?
相談現場が特にリアル面談の場合、簡単にリファーはできません。
- 退職を考えている方への退職のタイミング相談
- 退職後の健康保険の相談
- 病気がちで休職の方の生活設計
- 難病の方の生活設計
- 自己啓発のための能力開発
- 社会保険の扶養の相談
- 税金の壁の相談
- 副業の相談
- 妊娠出産の相談
- 育児の相談(育児休業・保活など)
- 残業時間の相談
- パワハラの相談
つまり、相談者の方のライフプランへの提案と解決ができないキャリアコンサルタントは、相談者の満足には繋がりません。
組織の会社員でもある相談者にも、必ずライフイベントもあるし転機もあります。転機をチャンスに変容させるのが我々キャリアコンサルタントの役目であると考えます。
前出の12項目の事例に対する回答の材料とキーワードを、以下の表にまとめました。
~ 事例 ~ | ~ 回答の材料 & キーワード ~ |
1. 退職を考えている方への退職のタイミング相談 | 雇用保険(基本手当)給付日数 高齢者の退職 |
2. 退職後の健康保険の相談 | 健康保険法(任意継続)・国民健康保険 |
3. 難病の方の生活設計 | 健康保険法(傷病手当金) 国民・厚生年金(障害年金) |
4. 病気がちで休職の方の生活設計 | 健康保険法(傷病手当金) |
5. 自己啓発のための能力開発 | 雇用保険(教育訓練給付) |
6. 社会保険の扶養の相談 | 健保厚生年金の(壁2つ) |
7. 税金の壁の相談 | 所得税(3つの壁) |
8. 副業の相談 | 就業規則 |
9. 妊娠出産の相談 | 健康保険。雇用保険 |
10. 育児の相談(育児休業・保活など) | 育児休業法・市区町村窓口 |
11. 残業時間の相談 | 労働基準法 |
12. パワハラの相談 | 労働施策総合推進法(パワハラ防止法) |
このような関連法制を知ることで、より多くの相談者に満足をもたらすことができるのです。
(齊藤 晃人)