【第2回】あの「沈黙の会議」の正体は何だったのか?私の体当たり経験が「組織開発理論」と繋がった瞬間

「あの時の、息が詰まるような会議の沈黙には、明確な理由があったんだ――。」
組織キャリア開発士講習の初日、講義を聴きながら、私は心の中で激しい衝撃を受けていました。
それまで私が3年間の現場マネジメントで経験してきたそのすべてが、すでに学問として体系化された「組織開発理論」の中に、綺麗に言語化されて存在していたのです。
「私のやってきたことは、間違いじゃなかった」
それは、かつての自分を救うような深い納得感の連続であり、バラバラだったパズルのピースが次々と噛み合っていくような、信じられないほど爽快な体験でした。

1. タックマンモデルで紐解く、私が駆け抜けた「4つのステージ」

講義のなかで最も鳥肌が立ったのは、集団が成長していくプロセスを示した「タックマンモデル」に出会ったときです。私が冷え切った組織を変革していったステップは、このモデルが示す4つのステージそのものでした。

  • 形成期(Forming):会議の沈黙 最初に直面した「誰も発言しない」様子見と不安の初期段階。当時は必死でビジョンを明確化しゴールの共通言語化を図りましたが、これは集団の不安を取り除くための正しい対策だったと知りました。
  • 混乱期(Storming):他責とかばい合い トラブルが起きれば身内をかばい、他責に走り、新しい取り組みを否定する現場。あの衝突の時期は、組織が成長するために避けては通れない「混乱期」だったのです。「衝突を恐れず、感情を認めながら安全な場をつくる」という私の実践は、このステージを突破する正攻法でした。
  • 統一期(Norming):自律的な連携 共通フォーマットやルールを制定し、自律性が生まれ始めた時期。主体的な意見交換をプロセスとして支援したことで、ルールが形骸化から「自分たちの共通言語」へと育っていきました。
  • 機能期(Performing):離職ゼロと業績改善 そして到達した、業績の劇的改善と「変革期の離職率ゼロ」という果実。対話によって目標への意味付けを適宜行い、熱量を保ち続けた結果が、この最高峰のステージでした。

「会議の沈黙も、他責的なかばい合いも、すべて集団力学の法則通りだったんだ」。そう理解できた瞬間、私の心から「再現性のなさへの焦り」が完全に消え去りました。のは「全員の沈黙」と様子見の視線。この状況を前に、私は目の前の課題へ体当たりで向き合うしかありませんでした。

2. 無意識のファシリテーション。PM理論と対話的アプローチの答え合わせ

さらに驚いたのは、私の直感アプローチが「PM理論」や「対話的組織開発(アプリシエイティブ・インクワイアリー)」の枠組みそのものだったことでした。

当時、私は「ダッシュボード化による構造化」というP機能(目標達成)を徹底しつつ、同時に「仕事観の徹底的な相互対話」というM機能(集団維持)を最優先で走らせていました。この両機能が巧みに連動していたからこそ、業績改善と離職率ゼロを両立できたのだと、理論が私の背中を押してくれたのです。

「なぜそれができたのか」を、他者が納得する言葉で、ロジカルに説明できる。私が長年欲しくてたまらなかった「武器」が、脳内で確立された瞬間でした。

3. 1対1の限界を越え、「組織の引き出し」を手に入れる

この講習の価値は、単に机の上の理論を学ぶだけにとどまりません。 何より大きかったのは、様々な組織で苦悩する仲間たちと席を並べた「濃密なワークショップ」でした。

互いに課題を持ち寄り、第三者の視点で率直に検討し合う。そのプロセスを通じて、他者や集団の「心理」に対する洞察が深まると同時に、リーダーとしての個別アプローチや意思決定の引き出し(ファシリテーションの選択肢)が飛躍的に増えていくのを実感しました。

私は、個別個人の社員への支援(1対1の面談)という視点を超えて、「企業や事業」という大きな組織レベルでの悩みを構造的に理解し、客観的な見立てと根拠を持ってアプローチするための強力な枠組みを手に入れることができたのです。

次回:「感覚のマネージャー」から「組織キャリア開発士」へ

実体験という強力なベースに、体系的な理論という翼が授けられたとき、私のビジネスパーソンとしての視座は一気に引き上げられました。 次回では、「組織キャリア開発士」としての新たな立ち位置と、経営陣(Cクラス)の心を動かす確固たる提案力を手に入れた私の、現在とこれからの展望をお話しします。